補聴器販売店の実態

これからの高齢化社会、補聴器の普及率が伸びることは間違いないと思います。しかしながら、専門的な知識を有した、良心的な販売店は極めて少ないのが実情です。

補聴器販売店の実情を赤裸々に語ることで、これから補聴器の装用を検討している方々の、参考になれればと思っています。

補聴器の調整は誰でもできる

前の記事で「補聴器の調整」について書こうとしたのですが、話が逸れてしまいました。


私が言いたかったのは「ある程度の補聴器の調整は、誰でもできる」ということです。だから、眼鏡店とか電器店とか、補聴器とは直接関係のない業界が補聴器販売に乗り出しているのです。


現在販売している補聴器は、そのほとんどが「デジタル補聴器」です。
そして、大半のデジタル補聴器は、パソコンのソフトを使って調整します。


まず「オージオメーター」という機械を使って、聴力を測定します。そしてそのデータをソフトに入力すれば、それだけで自動的に、その聴力にあった音が計算されて、補聴器にプログラムされるのです。


この、最初に計算される標準的な調整を「ファーストフィット」と呼びます。最近のフィッティングソフトは性能が良いので、7割位の人は、この調整でもそれなりに聞こえるようになります。


私は三つの補聴器専門店で働きましたが、専門店の社員といっても、何か特別な調整をするわけではなくて、ほとんどの社員は、この「ファーストフィット」から始めていました。


「ファーストフィット」が合わなかった時に、次にどんな調整をしていくかは、その人の経験や知識によって変わります。でも、ほとんどの人は、せいぜい全体のボリュームを上げるか下げるか、それくらいの調整しかしません。


専門的な知識がないのに下手にいじると、音のバランスが崩れて、逆に聞きづらい音になるからです。


実は、私もそうでした。最初はまずファーストフィットから始めます。そして、ファーストフィットにも、3~5通りの異なる処方があるので、音が合わない時は他の処方を試します。


補聴器を使うのが初めての方には、音が弱めの処方がなされます。これも、コンピューターに「初心者」と入れておけば、自動的に計算されるのです。


そして「うるさい」といわれれば音を下げ、「物足りない」「聞こえが悪い」と言われれば音を上げます。


「自分の声がひびく」と言われれば、低音域を弱くします。
「ハウリング」という補聴器から音漏れがしてピーピーなる現象がおこれば、高音域を抑えます。


と、この程度の知識さえあれば、簡単な補聴器の調整はできます。


ただ、これはあくまで「簡単な調整」の話で、重度難聴の方とか、極度の弁別の悪い方の調整に関しては、より専門的な知識が必要になります。


私も正直、自分なりに勉強はしていたのですが、本格的な知識というには物足りないものでした。


実際、補聴器の調整は百人百様となりますので、机上の知識はあまり現場で役に立たないのも事実です。「聞こえ」には、本人の主観がかなり強く入りますので、あくまで装用者自身にしか、本当のところは分からないからです。


なので教科書的な知識よりも「どれだけ親身になって顧客に寄り添えるか」ということが、一番大切になってくるのです。

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