補聴器販売店の実態

これからの高齢化社会、補聴器の普及率が伸びることは間違いないと思います。しかしながら、専門的な知識を有した、良心的な販売店は極めて少ないのが実情です。

補聴器販売店の実情を赤裸々に語ることで、これから補聴器の装用を検討している方々の、参考になれればと思っています。

高い補聴器を売れ!

とにかく、知識や技術には疎くとも、自分なりに一生懸命やっていたせいか、最初の月から120万円の売り上げを上げることができました。


そして、最初の一年間は、売上が100万円を切ることはありませんでした。これは、入社一年目の新人としては悪くない成績でした。


給料も上がりました。私はこの調子でいけば、もっと安定した成績を維持して、更に給料が上がるだろうと期待しました。


でもこれは、ビギナーズラックのようなものでした。翌年に初めて売上が100万円を切ると、それ以降は成績のアップダウンが激しくなりました。


そうなってくると、気持ちに余裕がなくなってくるので、お客様に接する態度も自己中心的になってきます。最初の頃のような純粋な気持ちは、徐々に失われていきました。


それは結局、補聴器販売の仕事は「営業」だからです。成績がすべてなのです。売れなければ、なんとか売らなければと焦ります。そうなると、お客様の事情よりも、自分の売上を優先してしまうのです。


なので、少しでも高額な補聴器を勧めたくなります。15万円の補聴器よりも、50万円の補聴器を売りたくなるのです。もちろん、高い補聴器は性能が良いので、勧めることが悪いわけではありません。


でも、自分の中に「邪心」があると、そういう思いはどこかしら態度に出ます。そうなると、高いものを売るどころか、お客様に逃げられてしまうこともありました。


会社としては、高い補聴器を売った方が利益が大きいので、安い補聴器ばかり売っていると評価は下がります。これは会社の方針にもよると思いますが、東洋補聴器(仮称)に関しては、安い補聴器を3台売るよりも、高い補聴器を1台売る方が評価が上がりました。


つまり、「高額な製品を売る力=販売力」があるとみなされるのです。


なので、補聴器を試聴させる時は、一番高額な機種を試聴させます。そして高額な機種から勧めていくというのが基本でした。


この時、高い機種の良い点ばかりを強調すると「そんな高いの買えない」と言われた時に、安い機種を勧めづらくなります。


その辺のさじ加減も、非常に難しいのです。上手な販売員は、どちらに転んでも売り逃さないように、客の様子をよく観察して対応します。


とにかく、補聴器の販売員は「少しでも高い補聴器を売ろうとしている」と考えれば、まず間違いありません。


でも、何度も言いますが、良い補聴器は確かに良いのです。ですから、お金に余裕があって、尚且つ、少しでも良い聞こえを得たいのなら、買える範囲で一番高いものを買った方が良いのです。


ただ、その方の耳の状態、聞き取りの状態によっては、高いものでも安いものでも、ほとんど効果が変わらない場合もあります。


だから補聴器販売の仕事は難しいのです。効果を「保証」できないからです。

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