補聴器販売店の実態

これからの高齢化社会、補聴器の普及率が伸びることは間違いないと思います。しかしながら、専門的な知識を有した、良心的な販売店は極めて少ないのが実情です。

補聴器販売店の実情を赤裸々に語ることで、これから補聴器の装用を検討している方々の、参考になれればと思っています。

補聴器は高い!

東洋補聴器(仮称)の営業形態は「店舗」と「相談会」の二本立てで、担当はそれぞれ決まっていました。


「店舗」の担当は店に常駐し、チラシや電話帳を見て来店した客に、補聴器を販売します。


「相談会」というのは、市民会館のような公共施設の一室を借りて「補聴器相談会」を開催します。集客は主に新聞折込のチラシで、人口規模に応じた枚数を配布します。


私は最初、相談会の担当から始めました。社用車を貸与され、県内ほぼ全域を走り回るのです。


補聴器というものは「売ったら終わり」ではありません。調整や掃除、電池や消耗品の販売など、顧客とは長い付き合いとなります。


なので、相談会の開催も販売のみが目的ではなく、以前に購入されたお客様(「顧客」と呼んで「新規客」と区別する)のアフターサービスも兼ねています。


私が担当していた地域の来場者数は、多い会場で十人前後。少ない会場では一人か二人でした。その中でも、初めて相談に来る新規の客は、全部の相談会場を合わせても、月に五人も来れば良い方でした。


そんな中で売上を上げるのは楽ではありません。「新規」で相談に来たといっても、全員が補聴器を買うわけではないからです。


通販で宣伝しているような、安価な製品のイメージで来場される方も多く、そういう方に「安いものでも16万円」などと話すと、「年金生活では無理」と及び腰になってしまうのです。


このように、補聴器販売の仕事は「高い!」と驚かれることの連続です。しかし、それに対して「そうですね、高いですよね」と同調しては、なかなか売れません。


かといって「いいえ、高くないですよ」と否定すれば反感を買ってしまいます。優秀な販売員は、その辺のさじ加減が絶妙なのですが、私は最後まで上手く対応することができませんでした。

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