補聴器販売店の実態

これからの高齢化社会、補聴器の普及率が伸びることは間違いないと思います。しかしながら、専門的な知識を有した、良心的な販売店は極めて少ないのが実情です。

補聴器販売店の実情を赤裸々に語ることで、これから補聴器の装用を検討している方々の、参考になれればと思っています。

採用決定

私の住んでいるA市から、面接場となるB市の支店までは、およそ30kmほどの距離でした。


支店は、駅から徒歩5分くらいのオフィス街の一角にありました。人通りの少ない通りで、どうみても、商店向けの立地ではありません。
店内も殺風景で、小売店というよりは、事務所という雰囲気でした。


面接の担当は、その店に勤務している先輩社員でした。
最初に訊ねられたのは、「補聴器がいくら位するか知っていますか?」ということでした。私が「よく分かりません」と答えると、「両耳で、大体20万円~60万円位」という、驚くべき答えが返ってきました。


私は正直、補聴器がそんなに高いとは思っていなかったので、「そんな高いものを売るなんて、おれにできるだろうか…」という不安が、一瞬頭を過りました。
私の予想では、高くても5万円くらいだと思っていたのです。


当時、私はまだ自宅にパソコンがなく、インターネットができませんでした。いまでこそ、何でもネットで簡単に調べられますが、ネットがない状況で、補聴器の詳しい情報を得るのは楽ではなかったのです。


それでも私は、この仕事に賭けてみたいと思っていました。
そして、面接の数日後、採用の連絡が来たのです。


求人票にもあった通り、研修からのスタートでした。研修期間は約3カ月ですが、前半で補聴器の基礎を学び、後半は販売にも携わるとのことでした。研修所には寮があり、そこで寝泊まりしながら、補聴器の知識と実践を学んでいくことになったのです。


採用が決まったのは12月の下旬でしたので、私は年明け早々、大きな荷物をゴロゴロと引きずり、およそ500km遠方の研修所へ向かって旅立ちました。


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